裸足の伯爵夫人    続・殴られやすいヤツ

長男のエンリケは 東京で生まれた。
代官山の産院で産まれた。 隣は おしゃれな雑貨屋さんと カフェ。
1998年の10月。
歩けるようになると 女の子たちのあとをついて回った。
1999年は ミニスカートが流行っていた。
素足にミニスカート。
ストッキングをはかない たしか なまあし とかいうことばも流行っていたのではないかしら。
エンリケはとことこと きれいな女の子のスカートの中に頭をつっこむと
両手をぺったりと 女の子の内股に置く。
うれしさのあまり 濃厚なよだれがたれる。
つつっーーー
女の子が叫ぶ。
きゃーっっっ
そして エンリケと目が合う。
あんっ かっわいい
そしてほっぺたにさわると エンリケは 絶好調。
そういう美しい日々を過ごしていた。
2000年 スペインに移住。
大好きだった スカート潜りの日は終わる。
スペインにだって ティーンエイジャーのかわいい子はいる。
でも あの華奢で 骨細で 絶対的に悲鳴をあげてくれそうな女の子がいない。
かなり強そうな女の人たちを遠目に見ながら
ちょっとしゃいに 隠れて すごす日々の始まり。

そのくらい 日本の女の子たちが大好きだったのだからと
ある日 食事の時に父親が訊く
「君 日本人の女の子と結婚したいの?」
エンリケはうつむきかげんで 首を横に振る。
「だって こどもが チノ(中国人)って よばれるから・・・・」

なんか ちょっとさびしかった。
スペイン人のかあさんがほしいなんて 思ってるわけじゃないのはわかってるけれど。

差別って言う点では アルバロのほうがずっと そういう環境の中にいるのではないかとおもう。
エンリケは マドリッドにいたときは 特に何も感じない とても幸せな日々を過ごしていた。
カソルラに来て 壁を感じたのは 特に外国人の母を持っているからではない。
マラガ出身の友だちも ここでは よそものなのよねーって からから笑う。
かれこれ 20年住んでいても ある種の壁がそこにある。
それは 日本の田舎も同じだと思う。
エンリケは こどもだから そういうふうには考えない。
たぶん 差別だと 感じている。
でも たとえば お誕生会なんか かれの同級生には いつも招待状をもらっていた。
わたしのよく知らない友だちからも。
アルバロの場合は違う。
よく お誕生会に行けない寂しい週末をすごしていた。
アルバロと ジプシーの子と そして モロッコ人の子だけが招待されない。
クラス全員が 週末を一緒にすごす。

エンリケのクラスの親たちは 若い。
たぶん 七十年代 八十年代生まれも何人かいる。
平等とか権利とか そういうことばの中で育った。
アルバロのクラスは 子供達は ずっと小さいのになぜか
親たちは 年上。
ほぼ 六十年代。
だから だと思う。
いやなものは いや なんだと。
差別なんてことばさえ考えないと思う。
よくわかんない人の子供なんて招待しない。
最初は 目があっても 挨拶しない彼女たちに かなりめげた。
もちろんほんの一部。
その反面 おしゃべりするおかあさんたちも何人もいる。
年が近いから 話もあう。

若い世代の概念に裏打ちされた
自分の感情とは関係ない コレクトな行為をするという義務
みたいなもの。
インコレクトなことをしたくないという意志。
そして 自分につく嘘。
その嘘までも信じてしまう 自分の概念。

そういうところでがんじがらめになって 亀裂みたいなものが走ってるのかもしれない
と 最近 エンリケのクラスを見ていて思う。

アルバロのクラスはあいかわらず 仲良しは仲良し。
たぶん このままいくと思う。
口を一度もきいたことのない おかあさんとも そのままで。
すべての人とわかりあえるなんて 妄想なんだと
アルバロはこの小さな世界で 学んだのだと思う。
だから それはそれで いいと 思ってるのだと。
そして 彼はビオラを弾く。
自分の好きな楽器だから。
みんなピアノのほうがかっこいいと思っても
自分の好きなもの。
自分の 内的幸せ。

エンリケにも 自分の大好きなのは 日本人の女の子の華奢な ストッキングをはいてない脚だっ
と 言って欲しいね。
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Commented by mimizu-1001 at 2010-01-19 09:21
内容は内容で感想文を提出したくなるような内容だけど、
文体が、好き。
特に、落とし方が、好き。
そして、歳月の概念のない僕にまねのできない、
1998年とかについての語り方。
cazorlaさんはまねをしてるんじゃないんだろうけど、春樹の初期っぽくて好き。
Commented by antsuan at 2010-01-19 09:28
小さい頃、兄ばかりが優しくされて自分は放ったらかしにされたのを僻んでいましたが、今思えば、母の優しいまなざしが思い浮かびます。

エンリケくんの特技は母親の優しいまなざしがあってこそでしょう。
Commented by cazorla at 2010-01-19 22:34
みみずさんに 文体 褒められるとうれしい。
まねしてないけど 影響はすごい とおもう。
若い頃は 春樹のあり方が好きだったから読んでいたんだけど
最近は 書き方がすごいなっと。

大急ぎで書いたから 説明不足だったかなと
あとで反省したんだけど・・。
Commented by cazorla at 2010-01-19 22:35
あんつぁん
エンリケ 赤ちゃん時代が末っ子に比べるとほんと短かったです。
ほんとは もっと 赤ちゃんあつかいされたかったんだろうと
最近 思います。 で 今も きっと 甘えたいとおもうこともあるんだろうな。
Commented by toqqum at 2010-01-19 23:02
スカート潜りのエンリケ君がクレヨンしんちゃんとだぶってしまった…。
ごめん、品のないコメで。
Commented by cazorla at 2010-01-19 23:58
とっくん
しんちゃんって やっぱり日本のもんだよねーとおもう。
しんちゃんの存在は あの骨細のかわいい女の子の存在なしにはありえないっ。
Commented by Haruki at 2010-01-21 08:05 x
文体は淡々としているんですが、何だか読んでいて切なくなりますね。
私もスペインに来てから感じることはあります。
私の性格とか考え方の違いとかではなく、もうアジア人の顔をしているというだけで共有できる範囲が狭いと思われること。
最初は皆どう接して良いか分からないから、仲間に入れてくれているようでいても絶対こっちを見ないこと。
そういうことの積み重ねの中で、少しずつ心を通わせられる友人もできあがっていくんでしょうね。

子供心には厳しいこともあるかも知れませんが、Cazorlaさんのお子さん達にとっては成長の一段階なんでしょうね。
Cazorlaママの優しいまなざしが目に浮かぶようです。
Commented by cazorla at 2010-01-21 15:53
Haruki さん
幼稚園時代の仲良しが いじめっ子に変わるっていうのは
経験としてつらいだろうな と思います。
差別することで 優位にたちたい と思ってるのかも。
日本に住んでいたら また違った形で 違和感があったと思うし
そして それを想像していたのでひとりっ子にしたくなかったというのもあるから だから 予想済みのことではあるのですよね。
兄弟がいて よかったって 思ってくれるとうれしい。
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by cazorla | 2010-01-19 08:15 | 思うこと | Trackback | Comments(8)