少年 

金曜日にプールに行った時のこと。
金曜日 午前11時半。

プールは入り口が門扉になっていて タイル張りが5メートルくらい続いて建物の入り口になる。
そこにレセプションがあって 化粧室 シャワー 着替え。
今は 節約のため 午前中はクラスの指導をする先生が一人で働いている。
金曜日 門扉が閉まっていた。
裏に回って覗いたら ちゃんと泳いでいる。
門扉が閉まって 自動的に鍵がかかってしまったのだろう。

門扉の横では 男の子たちのグループが タバコを吸っている。
この時間に つるんでタバコを吸っているのだから 不良である。
スペイン語ではこういう子たちを ganberro ガンベーロ と呼ぶ。
なんとなく 音からして 悪って感じ?
辞書を引かなくても すぐに理解できることば。
こういう子たちとは あまり 関わらないようにしている。
いきなり チナ(中国人)と 怒鳴ったりする。
あんまり いい気持ちはしない、もちろん。
だから 関わらない。

でも こいつらしかいない。

門扉はだいたい 3m。
そこを飛び越えて 中で指導している先生に 開けてもらう。
それしかない。
だって 泳ぎたいんだもん

『ねえ 君たちに助けて欲しいんだけど』
一瞬 しーーんとする。
意味がわからなかった模様。
もう一度 言う。
『ねえ 君たち 助けてもらえるかな?』
『えええ 助けてって??』
『プールに来たんだけど 閉まってるのよ。
でも 中に人がいるから 君たちの誰か
あの塀を飛び越えて 開けてもらうように頼んでくれないかな」
みんな お互いの顔をじっと見る。
無言の相談。
一番デブの子が言う。
『それさ 不可能だと思うんだけど』
お前に頼んどらんぞ と内心 思うけど 無視。
『いいよ、俺がやる』
と スケボーが好きそうなタイプの男の子が言う。
軽く走って 飛び越える。
中に入っていく。
すぐ戻ってくる。
『なんか 水泳教室みたいだー。
セニョーラは生徒なの?』
『ううん 違う。 でも 水曜日にも来て
先生が金曜日も空いてるからおいで って言ってたの。
先生は ウバっていうんだけど ウバー 外で待ってる人がいるよ
って叫んでくれない?』
頷いて中に入る。
でも またまた すぐに戻ってくる。
『なんかさ ばあさんがいっぱいいて 先生がよく見えなくて、、』

そうだ こいつ ものすごくシャイなんだ。
シャイで 自分をうまく表現できなくて つるんでる。

私の後ろで 他の男の子がコソコソ話してる。
『お前さ なんか 中国語 知らない?
なんかさ なんか 中国語で 話してみようよ』
『知らねーよ。 それに中国人かどうかわかんないしさー』
『俺 思うんだけどさー やっぱー あれだよ
外国に住んでる外国人なんだから 英語じゃないか』
『だな 英語で話しかけてみようぜ。』
『おい なんか 英語の文章 なんかないか
なんか かっこいい フレーズ 言ってみろ』
『俺 英語知らないもん』
『やっぱ スペイン語か つまんねー』

その間に もう一度 飛び越えていった男の子は中に入っていったけど
やっぱり 怒鳴る勇気がなくて 戻ってきた。
いいよ しょうがない。
飛び越えてくれただけで 十分だ。

『君の名は?』
『アドリアン』
『ありがとう アドリアン。 
君って とってもcoolな 男の子だ』

彼は 一瞬 顔を輝かせた。

私もなんとなく嬉しかった。
彼らは 15歳の少年たち。
時として チナ なんて叫ぶけど 
彼らは コミュニケーションの術を持たない。
シャイな 15歳の男の子たち。
世界とどう折り合いをつけていいのか。
学校でもつまずいてしまって 自分の価値を見出せなくて 戸惑っている
ただの 15歳の少年。


今 フランスのニース在住のきょうたちゃんが 少年というお話を書いてます。

もう少し積極的に 少年たちと関わっていきたいと思います。

e0061699_07122306.jpg

写真は 息子とその友達です。 









[PR]
トラックバックURL : http://cazorla.exblog.jp/tb/23761152
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Commented by liebe at 2015-10-11 15:17 x
私の場合、意図的にしたことだけど。家の水回り修理担当の人とカフェの意地悪で無愛想な人。なんか気になってね、酷い対応されても笑顔笑顔笑顔で話しかけ続けた。カフェの店員さん1ヶ月位で引きつり笑い、その後笑うようになって今では友人のように話せる。修理の人は犯罪者顔で無表情からドア開けたらキラキラ笑顔で「こんにちは」って人に(笑)不良にしても人嫌いな人も対人関係で“優しさにふれる”や“無条件に肯定されること”ってきっと少なかったのかもね。ありのままを“肯定されたい”だけなんだよね。表情が光る瞬間、嬉しくなりますよね。因みに私も幽体離脱2回ほどやってます^_^;
Commented by kind1959 at 2015-10-11 19:01 x
とってもステキな話におもわずほころんでしまいました。
関わるってことが人間にとても重要なことなんだなと改めて考えさせられました。関わってほしい、受け入れてほしいってのか。「交通」の字の意味もかかわり合うということらしいです、その意味で言うと、現実は、もうね、クルマで割り込んだり、意地の張り合いだったり、すれ違い様ぶつかっても知らん顔、一方で睨みつけたり、へんな世の中です。それから近頃の若い母親達はケータイに夢中で小さい我が子が話しかけても知らん顔という光景を良く見かけます。この家族、将来どうなるんだろうと余計な心配してしまいます。なんというのか、ちかごろ世間に大人が居なくなってしまったと感じます。
Commented by cazorla at 2015-10-11 23:48
> liebeさん

読むクスリって 昔文春に連載されたエッセイにマクドナルドのスマイルについての解説が載っていました。 にっこりされると その瞬間 ドラッグみたいな成分が脳から出てきて ふわって状態になる。その瞬間に ポテトおつけしますか なんて訊かれると はいって答えちゃうんだそうです。 にっこり って気持ちいいですよね。 ある男の子が会うとにっこり笑ってくれて嬉しくなる。 思わずこっちも 全力でにっこりします。 そういう経験がないと にっこりする って できないんですね。 いやーな奴が 心の底から嫌な奴ってことは稀なのだと思いました。 特に若い子は 変わりうるから そのお手伝いをしていかなくっちゃ。 それ 自分のためでもありますね。 だってニコニコしてると自然に幸せな気分になりますものね。
Commented by cazorla at 2015-10-11 23:55
> kind1959さん

20年前 長女が小さい時は 若い母親 たまごっちの時代でした。
おいおい 自分の子供をまず育てろよ って言いたくなる。
母親に相手にされなかったら どうやってコミュニケーションを学ぶんだろう。
兄弟も少ないしね。 だから 大人が つながる努力するしかない。
いつかは自分に戻ってくるんですからね。
でも うちの子たち見てても思うんだけど 世間で学べたことが学べられないでいる。
こんなことがわからないのか うちの子って時々悲しい気持ちになります。
友達みたいな 先生 とか言っても 結局 本気で関係を持とうとかしないで
事勿れ主義で 済ませているからなんでしょうね。

Commented by おーやま at 2015-10-12 21:24 x
そうやって若い子をほめてあげられるのは
大人の女だけよ。

それができるのはクールな大人!
Commented by kyotachan at 2015-10-13 15:28
タイトルが少年だから、もしや、とは思ったけどリンクどうもありがとう。
わたしのほうの少年は行き詰っております。汗汗汗
少年、いつの時代でもどこの国でもあんまし変わらないのかもね。
うわっ こいついやなやつだなー て思うとき「この人にあわせないようにしよう」という気持ちが働く。「わたしまでいやなやつになることはない」って。わたしはいつも通り、いやいつも以上に意識していいやつになったろーって。あれ?そんな話じゃあなかったかな。
Commented by cazorla at 2015-10-13 18:43
> おーやまさん

ありがとう。 母親業長いからね。
ははは 褒めて育てるってあったでしょう?
実現はなかなか難しいけど。
Commented by cazorla at 2015-10-13 18:46
> kyotachanさん

小説家の体質は深読みにある。 ははは そーいう話かも。 
できるだけ いい方に解釈するのも 自分に都合よく解釈するのも
生きる知恵ですね。 
ガジガジやりあったら 出口なくなるもんね。
相手が笑えば楽しくなる。

少年 楽しみにしてます。 って プレッシャー?
ゆっくり書いて。他の記事も楽しいから。

名前
URL
削除用パスワード
by cazorla | 2015-10-11 07:13 | スペイン若者 | Trackback | Comments(8)