生きる力

少女時代を一緒に過ごした犬がいる。
黒い柴犬。
これ以上 頭の良い犬はいないと断言できるくらい賢くて
ユーモアのある犬だった。
犬嫌いのおばさんに出会うと
近寄って お尻をクンクンして
うわっ 臭いって顔で 体をよじって
失神するふりをする。
周りで それを見てる人は 笑いをこらえる。
おばさんは 大急ぎで逃げるように 去る。
誰しも パンツのにおいに関しては 自信を持って無臭だとは言えない。
夜 私が寝ていると 時々 きて 布団をトントンする。
それは 私が寝相が悪くて 布団を脱いでしまうから。
冷蔵庫だって開けられた。
朝 日の昇らないうちに 出かけて 一緒に山を走り回った。
昭和40年代の地方都市は 野犬もまだ多かった。
だから 私たちの散歩には 30匹の野犬がお供をした。
私の犬は 彼らの王だった。

だから 彼が年取って おまけに睾丸に顔を患い 歩けなくなった時は 悲しかった。
彼を抱っこして 思い出の場所に連れて行って 
ほら ここ 一緒に歩いたよね と言った。
その時は もう私は実家に住んでいなかった。
『僕は もう 歩けないんだよ』
と 彼の目は 語った。
それでも諦めず 腕に抱えて歩き回った。
彼は 悲しそうに 私を見ていた。
そして 食事をするのをやめた。
大好きな 赤身の牛肉も もう彼には なんの魅力がなかった。
そして 静かに 私の腕の中で死んでいった。

歩いて と願ったことは 彼を苦しめただろうか。

母が倒れた。
年末にc一度倒れて 痛い 痛いと言いながらもなんとか起き上がった。
そのあと また 倒れて トイレに行くのが苦痛のようだった。
夜だけでも オムツをしたら と言ったら
目が急にきつくなった。
これは プライドの問題なんだ。
そして また 倒れた。
冬は 体が冷える。
筋肉が冷える。
うまく 足が動かない。
倒れやすい。

母の脚をマッサージする。
信じられないくらい 冷たくなっていた。
爪が伸びていた。
そういうことを気をつけてあげていなかった。
爪を切ってあげる。
マッサージを続けて 足がだんだん温かくなる。
ポータブルトイレを部屋の片隅に置くことにする。
母は 承諾した。
母は もう 5mの廊下を歩いて行くのが苦痛なのだ。

それでも 歩かないと 本当に 歩けなくなるから 練習しようと言うと
母は 悲しそうな顔をする。
痛いよ という。
もう あまり本が読めなくなった と言う。
耳が遠くなって テレビもよくわからなくなった と言う、

それでも 生きていてほしいと思うのは 娘のエゴであろうか。

それでも 私が 用意する食事を美味しい美味しいと言って 食べてくれる。
おいしいと感じること。
オムツをつけない と頑張ることは
生きる力なんだと思う。


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Commented by antsuan at 2016-01-17 21:47
単なる介護は無力であり、家族の愛が「生きる力」になって居ると思います。
Commented by liebe at 2016-01-17 22:50 x
私の娘も独りっ子。私が死んだら天涯孤独。だから時々娘が悲壮感たっぷりに「お母さん白髪増やさないで」「お母さんに皺が増えるの嫌」って言うの。で、怒ってしまった「どんな風に老いるか、どんな風に死んでいくか、私の人生は私が決めるの!貴女の為だけに生きてはいないの!」って。そして今年、私の母が倒れ排泄も全介助、食べる事も意欲もなくなった。私は私で母を思わない日はないわけで、頭の中では過ぎし日の母を思うわけで。生きる力、やはり娘の笑顔かな。そして母への愛は朽ちていく姿を笑顔で見守ること。かえられないものを受け入れる勇気。これが一番必要な勇気。
Commented by mimizu-clone at 2016-01-17 22:55
父親を看取って思うこと。
時期は、自分でわかっていると思います。
子供にできることは、それを決める自由を奪わないことなんじゃないかな、と。

でも、それを決める判断力が鈍っている場合もままあります。
そんな時は、その手助けをするのが子供の務めかもしれませんね。
Commented by おーやま at 2016-01-18 00:35 x
それだけ強く生きてほしいと誰かに思われるのは
そりゃあ嬉しいんじゃないかな。
私はまだ想像だけど、もし親が動けなくなって行ったら、
機嫌が悪くなって行ったら、
安らかに逝ってほしいって
全く逆の事思いそう。

それにしても柴犬くん、犬を超えている。
今ならセレブわんちゃんになって週刊誌をにぎわせてるとこ。
Commented by Mehreenkhan at 2016-01-18 09:30
私も介護経験者なんで、お気持ちわかります。
何が当人にとって幸せか・・・というのは本当に難しいことだと思いますが、皆さんがおっしゃられているどれもが当てはまることなんじゃないかとも思います。『生きる力』はまだまだ生きたいという思うときには介護側が手助けをするのは重要だと思うし、もう十分生きたので楽にしてほしいと思っているようであればそれもそのようにそっとする手助けをするのも重要なのではと思います。
わが義父を看取った時に思いました。ガンの手術から3か月は苦しみましたが、当人の希望によりホスピスへと入り痛みがある場合はモルヒネを打ってもらい軽減。半年そこで生活しましたが、院内で行われた七夕祭りやちょうどお誕生日もあったのでバースデーパーティーも開いてもらい最後楽しい人生だったと言って他界していきました。ホスピスへは賛否両論ですが、義父の最後半年の人生とその前の3か月間の苦しみを比較、そして最後に他界する間際に痛みがなく笑って他界できたことをみるとホスピスもありだと思いました。
Commented by anohiwa at 2016-01-18 16:49
なんだか心が痛いです。

老後を考えます。
あまり元気でない私は、前もって娘たちに言っています。
『ママになんかがあったらできるだけ 痛くなく、苦しくなく 早く死なせてね』と。
長女は言います。
『どんな事があっても死なせない。
あっちこっちをつぎはぎにして、管で繋げて 生かしておく』と。
次女に頼んでいます。
『そっと、管を外してね、、、、ママ、痛いのや、苦しいのは辛いから』と。
でもね、いざその時になったら、≪やっぱり長生きしたい!!≫ って思うのかも。
でも、オムツは嫌だな――― いつも思っているけれど、それを決めるのは、私ではなくて、娘たちに任せようかな、、、、と。

カソルラさん、お母さまを どうぞ、優しくしてあげてくださいネ。
お母さまの胸の内は、何を思っていらっしゃるのでしょうか、、、
どうぞ、カソルラさんもお母さまもお辛くないように、遠くから、祈っています。
Commented by cazorla at 2016-01-18 19:02
> あんつぁん

ありがとうございます。
人間ですもの 愛なしで 生きられないですよね。

Commented by cazorla at 2016-01-18 19:07
> liebeさん

誰も私に 白髪 増やさないで って言ってくれません。
羨ましい感じ。
でも そうですね 自分の老後 ですからね。
私自身もどう老いていくか 母と一緒に考えていきたい と思います。

受け入れる勇気。。 持たなくてはね。 (できるかな。。)
Commented by cazorla at 2016-01-18 19:09
> mimizu-cloneさん

樹木希林の広告が話題になっているそうですね。
自由を奪わない。

楽しいって思ってもらいたいな。
Commented by cazorla at 2016-01-18 19:13
> おーやまさん

私 父を看取ってないから なんか 実感がなくて まだ そこにいるような
ある日 ふらっと戻ってくるような
そんな曖昧さが あって 
母と二人でいることが多かった子供時代を過ごしてる そんな錯覚があるんですよね。

うちの 犬 すごいでしょ?
ケーキ焼いて 冷ましてるときに 欲しそうにしてると 三時になったら 切るからね
というと どっかに行って 柱時計が三つなるときていた。 すごいでしょ?
そうだ ケーキ焼くとき タイマーじゃなくて 焼きあがると ワンと一言。
そのとき オーブンから出すと ちょーど良い焼き加減。 
夫は それは一人っ子の 想像の世界だって言うけど。 ほんとよ。
Commented by cazorla at 2016-01-18 19:16
> Mehreenkhanさん

ホスピスとか
元気な老人の場合 デイサービスとか
他の人と 関わるチャンスが スペインにいると なくて
それが申し訳ないな と思ってます。
どうせ 本を読んだり 手芸するのが好きなんだから 日本もスペインも同じだろうと
思って 連れてきたけど 孤独だろうな。
私が 忙しかったり 年末 寝込んでいたけど そういうとき
本当に 孤独だろうな と胸が痛みます。

本人の本当の胸のうちを 表情からよみとらなくては。。ですね。
ありがとうございます。
Commented by cazorla at 2016-01-18 19:18
> anohiwaさん

ありがとうございます。
女の子 特に 日本育ちの女の子は優しい。
私もお嬢さんと同じ。 どんなことがあっても死なせない って気分があります。
55にもなって。
それでも やっぱり もう一度 散歩したいな 一緒に。
Commented by liebe at 2016-01-18 22:47 x
cazorlaさん独りで辛いですね。私も独りで父を看取り母を介護。日々葛藤です。母に試してきたこと伝えたくてまた書き込みしています。オムツ母も最初拒否。まず生理用ナプキンとおなじ型から勧め(秘密で重ねたりして調節してました)慣れた頃「夜大変でしょ~。こんなのあったの!」ってロングサイズを勧めた。パンツ型は便失禁するまで履きたがらなかったな。これは尊厳を守ってあげなきゃ、鬱に入ったりするから仕方ないですよね。散歩は車椅子で外に連れ出して、公園で車椅子を歩行器代わりにして歩いてもらうの。晴れた日なら気持ちも元気になるから。おやつ持ってね。残り少ない母との時間、お互い大切に頑張りましょう。
Commented by sheri-sheri at 2016-01-19 11:04
初めまして。はるばる鹿児島の霧島より飛んでまいりました。お母さまに対する愛と責任感、感じいりました。お母さまはお幸せですよ。愛する娘さんが真剣に思ってらっしゃることがおわかりになるので。心は満たされていると思います。でも哀しいかな、人間は必ず老いる。御自身のお身体やお心を大切にし、悔いがのこらないようにお母さまを見守ってあげて下さい。私もcazorlaさんのようなお嬢さんが欲しいです。
Commented by barrameda at 2016-01-19 23:25
お母様、幸福だと思います。

日本に限らず家族もいなくて死すら誰にも知られない人が大勢いらっしゃるんですものね。
スペインに連れてきたのは良くなかったのかな… なんていうふうにはお考えにならないでくださいね。

まずはCazorlaさんご自身がリラックスなさってください。
足が弱くなられたとしたら他の部分が強くなることもありますよね。
Commented by amore_spacey at 2016-01-20 01:14
はじめまして。
胸がきゅんとなりました。
1人暮らしの88歳の姑や、日本の実家の80代と70代の両親を思いながら
果たしてcazorlaさんのような優しさ・忍耐力気丈さが
自分にはあるかな?と考えてしまいました。
私が暮らす地方は、デイサービス・訪問看護・高齢者のコミュニティなどが
充実しているので、格安で利用することができます。
Commented by mamoei at 2016-01-20 08:35
おはようございます☆

愛犬のお話に続くお母さまのお話。
cazorlaさんの揺らぐ思いもありながら、お母さまに対する強い想い『生きていてほしい、死なせない』が伝わってきました。

私の母も病院で横たわりながら、生きていてくれます。
『もう、いいよ』とは言えません、生きていてくれたら会えます。
エゴかもしれないと思ったことは幾度もありますが、その思いのほうが強くなることはありません。

母ですもの。


Commented by おーやま at 2016-01-23 22:54 x
老いて行く事という深いテーマに比べたら
昨晩吐き続けていた子どもの胃腸風邪が
何でもないことに思える。

また昔の母娘に戻ったような。ね。
不思議な感覚。
せっかく近くにいるんだから、かそるらさんの思うように
お世話してあげたらいいと思う。
戻ってきた二人の蜜月。
諍いもあるだろうけど、くすっと笑っちゃう日常の小さな幸せを共有してください。
柴犬は、エンリケ夫の説にも頷いてしまう。
でも大事なのは真偽じゃない。
そんなシュールな日々を犬と過ごした思い出があること。
Commented by cazorla at 2016-01-24 01:43
> liebeさん

母は 元気が不足すると 外にでたがらないのです。
外人だらけやーって言って。 笑
なんかねー みんなが見るって。
まあ 見るよね。 だって 老人のアジア人って 少ないもの スペインでは。
嫌なものとして見てるわけでは ないし
みんな 親切なんだけど。
私だって 元気がマイナスになると 外に行きたくなくなるから よく わかる。
でも 連れ出してみます。
オムツもね 長い時間 外にいるような時は やっぱり 便利だし。
徐々に 太陽と 仲良しになって いこうと思います。
ありがとう。
Commented by cazorla at 2016-01-24 01:47
> sheri-sheriさん

初めまして。
父が 鹿児島 坊津出身です。
鹿児島 美味しいものがいっぱいありますね。
懐かしい。

お嬢さんなんて 久しぶりに言われました。 これも母がいてくれるおかげですね。
大事にしなくっちゃ。
責任感は どうかな?? 私 とにかく 一人っ子なんで 置いてけぼりにされたくなくて。
母も私も 年取って子供を産んでるんで 年が離れてるんですよね。
普通だったら 間にもう少し誰かがいて 楽しく おしゃべりできるのに。
子供もまだ 独立してないから あっちに行き こっちに行きと
なかなか ちゃんと お世話ができなくて。

ありがとうございました。
Commented by cazorla at 2016-01-24 01:54
> amore_spaceyさん

初めまして。
コメント ありがとうございます。
母が 年取っていくって あんまり考えてなかったので
介護は 想定外でした。
デイサービス 訪問介護もあるのはあるのですが
なんせ 彼女 スペイン語が話せないんで あと 
髪が薄くなって 恥ずかしいの
アジアババア で 恥ずかしいの
といろいろ 自分で思うほど 人は 考えないし
88歳としては 綺麗な方だと思うのに
最近は 人とのおつきあいが嫌みたいなんです。

だから 結局 私しかいないし。
私の方が 母に頼ってるところもあるのです。
全然 忍耐力なんてないんです。
Commented by cazorla at 2016-01-24 01:56
> おーやまさん

老人と幼児って実はよく似てるんだ って書いてました。
世話する種類も
硬いものが食べられないとか
ぐずるとか
時々 意味不明とか
自己中心とか
ただ 時々 きついこと言われるんですねー。
親子だから。
でも 楽しく 過ごしていこう と思ってます。
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by cazorla | 2016-01-17 16:54 | スペイン年金生活 | Trackback | Comments(22)

あなたに会いたくて・・・・


by cazorla