おばあさんの手

ミミズさんのブログでこれを読んで以来ずっとおばあさんの手の映像が目の前をちらつく。

何年前のニュースだったか。
ホームレスの老婆だったと思うが、誰かから市役所に相談に行けと言われたらしく。
でも市役所はもう終業時刻で、職員がカンパンの缶詰を渡して「明日来て」と言ったらしい。
老婆はその晩、市役所の敷地内で死んでいたとか。
胸にカンパンの缶詰を握りしめていたと報道された。

ホームレスの人が市役所に行ったということはかなり切羽詰まっていたんだろうなと想像する。
せめてボランティアの人に連絡するとか、そういうことを考える。
老婆ということばで、母と結びつけてしまう。
90歳になった母と。

母が カンパンの缶を両手で抱えている姿を想像する。
母はもう歯が悪いので、誰かが開けてくれたとしてもそれを食べることができないだろう。
食べられないカンパンを抱えて夜を過ごす。
母は戦時中に食べた配給のカンパンを思い出す。
戦争中のかわいそうな青春よ、と笑った。
それでも母は青春時代をやはり懐かしく思うのだ。
多分。
若く、かわいい、その時代を。
戦争が終わって祖母に内緒で見にいく映画のことも。

食べたものより食べなかったものを強く思い出す。
付き合った人より付き合いそうになって付き合えなかった人を思い出す。
愛したはずなのに、愛さなかった人が懐かしい。

矛盾をいっぱい抱え込んで、寒い夜、食べることもなく缶の中から出しそびれてしまったカンパン。
カンパンはいつも手のひらの中にあるはずだった。
カンパンを食べられなかったからと、かわいそうに思うのはやめよう。
カンパンはきっと青春時代を思い出させていたに違いないのだから。
だから歩くのをやめてそこで静かにあっち側に行ってしまったのだ。



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Commented by アンジー at 2018-01-16 06:51 x
おはようございます!  なんと深い内容⁉️のブログ こちらでは ほんと 縮みつつある脳みそにもう一度深く考えることさせてもらえてありがたいです❤️ 体は寒いけど心は 若くかわいい時やなつかしい人たちで あたたかく満ち足りて 天へ昇られた と 信じたいですね(*^^*)   お母さま おられる幸せが まだまだ続きますように 祈ります❤️
Commented by mimizu-clone at 2018-01-16 12:33
物理的にカンパンを支給することがその人の幸せにつながる。
と考えるのはおそらく正しいのでしょう。
でも、例えば僕は、カンパンの手に入れ方を知らなかった。
だからこそ今がある、、、そういう考え方もありかな、と。
Commented by おーやま at 2018-01-16 19:27 x
”優しいこと”と”正しいこと”というのがあるんだって。

”正しいこと”は決まりを守ること。それ以外の人の気持ちなどに想像力を働かせずに
決まりだからと押し通す。
”優しいこと”は 決まりから外れてしまうし、責任を取れとか言われたら困るんだけど
相手のためにしてあげること。
旅行中に添乗員がツアー客に薬を渡すとか、予定ではないところに寄ってあげるとか。

みんなが普通に”優しいこと”ができる世の中が生きやすいよなーと思います。
Commented at 2018-01-16 19:48 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2018-01-16 19:48 x
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Commented at 2018-01-16 19:50 x
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Commented by hanaco at 2018-01-21 17:05 x
私もちょっと自分の母の手を思い出しながら、読んでいました。
ミミズさんのブログも読ませてもらいました。
やさしさって、市役所では、扱っていないのかな・・・。

スペインの城シリーズ、Facebookでシェアさせてくださいね。
(事後報告ですが)
Commented by cazorla at 2018-02-05 03:55
> アンジーさん

コメントありがとうございます。
レス遅れてごめんなさい。
天に行くときは幸せな気持ちで。
それが一番だいじなことです。
母のこともだいじにしなきゃ。
Commented by cazorla at 2018-02-05 03:57
>ミミズさん

それはやっぱり状況により、ですよね。
カンパンが幸せに繋がるかどうか、
固すぎて食べられなかったことが悲しかったかどうか、
どうなんでしょう。
カンパンが手に入っても入らなくても
ミミズさんはやっぱり今のミミズさんであると思います。
Commented by cazorla at 2018-02-05 03:58
> おーやまさん
そういえば、介護の人が、俳諧の老人の家に鍵をかけて訴えられたことがあったよね?
出て行ったら危ないからって、その人は気を利かせたのに。
決まりが増えすぎて、窮屈になってしまうと困るね。
優しさかー。
Commented by cazorla at 2018-02-05 04:00
> hanacoさん

ありがとう。
シェアしてくれて。
なかなか人が来ないページ、と言うか私のテーマ、あまりにマイナーでw

年をとるってどんな感じなんだろうなんて言いながら、還暦まで少し。
それが不思議な感じ。
Commented by cazorla at 2018-02-05 04:01
> 鍵コメさん

そのレントゲンはだれ?
なんか大変な状態。
息子くんももうそんなに大きくなったんだ。
ふむ、またメールします。

Commented at 2018-02-05 06:09 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by cazorla at 2018-02-10 09:22
> 鍵コメさん

いやー、いろいろ大変でねー。
書きたいこともいっぱいあるんだけど。
夏はスペインに来ないの?ガールトークしたいね。女子会しようよ、マドリッドか、もう少し北に行ってもいいよ。
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by cazorla | 2018-01-16 04:57 | 思うこと | Trackback | Comments(14)