「ほっ」と。キャンペーン

林檎の木の下で

スペインに引っ越してきて 一ヶ月目 毎日のように夢を見た。
一週間 同じシリーズの夢。
毎日 死んでいった人たちが 一人ずつ順番に夢枕に立つ。
「もしかして 私を迎えに来たの?」
と 思わず 質問した。
妊娠していた。 末っ子のアルバロの妊娠の時である。

Sの夢も見た。
Sは元恋人の親友だった。
SとMと元恋人と3人は ずっと仲良しで いつも一緒だった。
二人の親友は もてるタイプだったと思うが どうも 男同士の関係の方が好きで いつも3人と私  四人で遊んでいた。 夢の中でも 彼は死んでしまって それで みんなで 骨をうちの庭に埋めよう と言っていた。 それはいいね そしたら 毎年 みんなでお墓参りに来て 遊べるね と私が言う。 私たちは 芝生の上に スコップを突っ込み 穴を掘った。

それは 桜の花の散るころだ。

元恋人のQとは なんといっても八才も違うから つきあった八年の間には いろんなことがあった。 別れたのは 一度や二度ではない。 それでも なんとなくまた会ってしまう。 好きになる人はいっぱいいる。 誘ってくれる人もいっぱいいる。 でも 心が通じる人はわずかしかいないから。 そして いつも偶然がかさなってしまうのだ。
そして何度か目の別れの後のもう一度やり直しの時 それは今まで以上に蜜月だった。
私たちは たぶん このまま結婚したいと 思っていたかもしれない。
箱根に行くことにした。 
箱根行きの準備をしている時 Sから電話があった。
「なんかさー俺 さむくってさー」
3月の初めである。 ちょっと まだ寒いし なんとなく人恋しくなる時期でもある。
しかし 私たちは 箱根行きでうきうきしていたので 彼を無視した。
箱根からもどっても Sには連絡しなかった。
私たちは私たちの関係の修復に忙しかった。
そして 二人の関係があまりに甘く 私たちは その中にいた。

その時期 ちょうど元恋人たちの世代は大学が終わり みんなそれぞれの仕事が面白くなった頃でもあった。 結婚を意識する人も増えたし 結婚生活が忙しくなった人もいた。 その中でSだけは 司法試験の勉強をしていた。

Sが死んだ。
自然死である。
あまりに突然の死で 死体解剖をした。
彼は 自分の死を感じていたのだろうか。
みんなの家にも 毎日 電話があった。
「会いたいよ」

葬式にみんなが集まった。
もう 寒くても なにもしてあげられないのに。
会いたかったのは生きていた時なのに。
死んでもう話のできなくなった Sが箱の中で化粧をしていた。
香典は なんと三千万も集まった。 そのくらい沢山の友達が来たのだ。
小学校の友達 だけじゃない 幼稚園の友達も 赤ちゃん時代の友達も。
でも もう 彼を暖めることはできない。

私は泣いた。
一つの時代の終わったことに。
もしかしたら そのために泣いたのだ。
なんてエゴイスト。 
この思い出を恋人と共有することはできない それが悲しくて泣いている。

もしあの時会いに行っていればと だれもが思う。
もし 逢いに行っていれば 彼は死ななかったか?

もしも なんて ないのだ。
私たちは 彼の死を ほおっておいた。

私は恋人と一緒にこの思い出の中にいるべきだったか。
芝生の上にスコップをいれる その土の匂いを
私は本当の思い出のように 懐かしむ。
そして その思い出は末っ子の出産に繋がっていく。

Sは一人っ子だった。
ひとりで 何に苦しんでいたのか。
彼の苦しみを知ろうとしなかったことは罪だろうか。

だから 今 あなたがつらい思いをしていれぱ
あなたに寄り添いたいと思う。
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Commented by greenagain at 2006-12-10 03:14
寄り添えなかった人が悪いというわけではなく、
ただただ、タイミングが合わなかった、
あるいは、
悪いことが重なりすぎて、
ふっと吸い込み穴に囚われてしまうような死って、ありますね。

資格試験は人と人とのぶつかりあいではなく、自分との戦いだから無菌状態に陥ることもあり・・・吸い込み穴に囚われやすい。

あの世へ行った人に、思いをはせることはできる。
思い出すことが償い、否、「罪」ではないので、「供養」といいたいです、私は。
独りよがりでも、死者と会話していることになると思います。
教会や神社仏閣などの宗教施設は、そのための器だと思います。
Commented by seilonbenkei at 2006-12-10 03:20 x
人は痛みを他者に代わってもらうことなんてできません。
寒けりゃ自分で火を焚くしかないと思います。
周りにできることは、火にくべる薪を持って行くことくらいじゃないでしょうか?
で、薪を持ってきてくれた人のことは覚えてるもんなんですね。たとえ眠ってても。
Commented by cazorla at 2006-12-10 07:23
グリーンアゲンさん たまに夢を見るっていうのは 繋がってるんでしょうね。
一人っ子だったから おとうさんとおかあさんの姿が痛々しくって。 もちろん何人いても悲しみに変わりはないんだけど。
恋人は ゼミの友達と結婚したから きっと 思い出を共有したかったのね。
私が逃げた そんな感じかも。
でも 供養していきたいと思います。
Commented by cazorla at 2006-12-10 07:24
セイロンベンケイさん 
何もできない って自覚しないと
それはきっと傲慢な行為になってしまいますね。
傲慢にならないようにします。
そして 薪を集めたいと思います。
Commented by nena at 2006-12-10 07:40 x
虫の知らせですね。自分がその人を思うときってきっと相手にもつながっているとおもいます。たまに思い出すしてあげるだけでも、きっと彼はうれしいとおもいます。
Commented by cazorla at 2006-12-10 23:30
nenaさん きっともっと一緒にいたかったのは私たちのほうなのかもしれないですね。
桜の花を思いながら 彼のことを考えたいと思います。
Commented at 2006-12-11 14:57
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by cazorla at 2006-12-11 21:14
鍵コメ14:57さん みんないろんな思い出とその重さがあるんですね。

最後の質問 の 答え わかりません。
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by cazorla | 2006-12-10 01:41 | 思い出 | Trackback | Comments(8)

あなたに会いたくて・・・・


by cazorla