心臓を貫かれて

久々に疲れる読書をしていました。
一気に読んでしまえなくて 立ち止まっては 息をつかなくてはとてもつづけられない。

Shot in the Heart
Mikal Gilmore / / Doubleday
ISBN : 0385422938
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この本の訳書 心臓を貫かれて マイケル・ギルモア

e0061699_443371.jpg1966年から事実上 合衆国では 死刑は廃止されていたのだが この筆者の兄であるゲイリー ギルモアが 死刑執行を求め 死刑が再開した。 その家族の物語。
弟 マイケルは かならずしも 兄をかばってこの本を書いているわけではない。
事実を事実として 記述し その上で 彼の弟としての愛 そして崩れていく家族の中にあっても家族のなかに 憎しみと同様に 愛が存在していたことを書いている。



e0061699_4433534.jpgゲイリーギルモアはなぜ罪のないモルモン教徒を2人殺したのか。



e0061699_444527.jpg

母親としてこの本を読む時 時として必要以上に子供達を傷つけているのではないか という恐れを抱いてしまった。

以前 宗教のことを書いた時に コメの中で ヨーロッパにも邪宗がはびこっているのですね というのを頂いて その時ふと 邪宗というのは なんなんだろう と考えた事がある。
キリスト教にしても もともとはユダヤ教の1宗派 というか派生された 新興宗教であったと思うし また 仏教も ヒンディー教からすれば 新興宗教であっただろう。 しかし これらが邪宗ではなかったことは 歴史が教えてくれる。 邪宗と 本来的宗教の違いはなんだろうと。
それは 教えが間違っている とか 教祖が金儲けを目的としている とかいうのは問題外で どんなに 善の心が発端であったとしても邪宗にならざるおえない宗派もあると思う。
それは 未来をむいているか どうかなのではないだろうか。

なんの本であったか忘れたのだが どうしても忘れられない場面がある。
主人公の少女が刺繍をしている。
もうすぐ 完成という時に間違えてしまった。
少し 糸を切って やり直せばすむことなのに たぶん もう疲れていたのだろう。
少し切って そして また切って とうとう台無しにしてしまう。
と゜うせなら自分の手で台無しにしてしまいたくなる時がある。
ほんの少し ボタンがかけ間違えられただけなのに 何もかもを 壊してしまいたくなる時がある。 
強盗をする人の心理をある学者が書いていた。
「どうして すぐに捕まると明らかな犯罪を犯してしまうのか。
金に困って というが それで 金を受け取れる確率は低いのは明らかだ。
もうここまで落ちてしまったのだから徹底して落ちてしまいたくなる。」

長女のマリアは今 十一歳 小学五年生。
クラスには 離婚したり別居したりしている両親を持つ子供がいる。
彼女のクラスは比較的 良いクラスで みんな 八割以上の点数を取るが1人だけ いつも1割2割しか取らない男の子がいる。
彼の名はアンドレ。 
「アンドレ どうして勉強しないの?」とマリアが訊いた。
「俺んちは 親が離婚してるから 勉強したくてもできないんだよ。」と吐き捨てるように言った。
「アリシアのおうちも離婚してるけど 勉強してるよ。 私よりも良い点取るよ。
そんな言い訳していたら 自分の夢を叶えられなくなるよ」
マリアは言い過ぎたかもしれないと少し気にしている。

子供時代 未来を思い描けないと 永遠にこの子供時代が続き
そして この牢獄から抜け出せない そんな気がする時がある。
未来があることも忘れている。そして 不幸な気持ちにしている両親に 復讐するように 自分の人生を傷つけてしまう。 傷つけ始めると 歯止めが利かなくなるときがあるのかもしれない。

もちろん傷つけられた子供達がみな 犯罪を犯すわけではない。
それは 傷つけられた子供達にも個性があるように その表出する結果はそれぞれ違う。

ゲイリーの兄は ベトナム戦争に行くが 自分がもし敵を殺し始めたら 歯止めが利かなくなるのではないか と 怖くなり 戦地に行くことを拒否し 刑務所にはいる。
それぞれの物語があるのだ。

そして ゲイリーギルモアは死刑によって すべての物語に終止符を打った。
モルモン教の血の贖い をするように 銃殺刑を望み 心臓にマークを付け 五発の銃弾が そこを貫いた。

追記 村上春樹氏は 基本的に自分の好きな本を翻訳している。 ほとんどが 小説である。
しかし この本は例外で 夫人の強い勧めで 翻訳した。
ノンフィクションだけど この中に自分の物語を見いだしてしまいます。

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Commented by antsuan at 2007-05-28 08:26
こういう本はとても手にしたいとは思いませんが、書く人も翻訳する人も心の中を吐露したい気持ちなのでしょう。人間はもっともっと他の人の気持ちを疑似体験する必要があると思います。
Commented by maron415 at 2007-05-28 13:09
袋小路にはまりそうな本ですね。
結論はでないのだろうな。うん、手にしたいワン!
Commented by cazorla at 2007-05-28 13:40
あんつぁん 紹介のしかたが悪かったのですがたんに吐露なら私は感動しなかったと思います。 吐露してない部分に感動するというか。 人間はすべて その可能性を持っています。自分自身の残虐性 それは 犯罪をしようと するまいと 持っているわけで その自分の残虐性を見つめてしまいます。
よく体験とかいいますが 体験してそれで なにかが変わるとは思いません。
そうではなく いかに自己に向き合えるかだと思います。
こどもを犯罪者にしないためにも。
無学な親だから または バカな親だから こどもが犯罪者になるわけではなく
みんな可能性を持っています。 だから そこで 立ち止まって 自分自身を振り向く必要があるのではないかと思うのです。 
Commented by cazorla at 2007-05-28 13:41
マロンママさん これは自分の中にある残虐性の物語でもあるし
お勧めです。
Commented by honn623 at 2007-05-28 14:25
普通の子が残虐な殺人事件などを起こしたとき、自分でぶち壊しにかかったんだな、と感じることはありました。
犯罪を犯す心理状態には、すごく興味があるほうなんですが、そこが私の残虐性なのかな。
Commented by npura at 2007-05-28 18:49
確かに一気に読んでしまえず、少し休みたくなる本はありますね
でも多分、私はこの本なら一気に読んでしまうでしょうね
そして自分を振り返ってみるかもしれない
この歳になるまでにその残虐性は0だったかどうか、あったとしたらどうやって抑えたのだろうかと自問すると思います
村上春樹 訳の本ですね、わかりました

Commented by antsuan at 2007-05-28 19:24
>いかに自己に向き合えるか
本当にそうですね。私はその自信がないからこういう本を手にしたくないのだろうと思います。
Commented by seilonbenkei at 2007-05-28 22:34 x
一部だけへのコメですが。
犯罪に走る心理なんて特別なものじゃないと思います。
犯罪の種類と程度によって、特別かどうかを周囲が決めるんじゃないでしょうか。

その本は読んでみたいです。
Commented by eaglei at 2007-05-29 06:26
堕ちて行く時は、坂道を転げるように、悪いほうへ悪いほうへ行ってしまいます。
人を避けて、ちょっとでも友の言葉を聞いていたら、助かったものを・・・。

だから、どんな事態になっても助けてくれる、自分を目覚めさせてくれる友人が必要です。いつ誰が心がへたれてしまうかわからないから、友を求めることが大事です。

いろんな出来事があると、その人には何でも言ってくれる、身近な友だちがいなかったのかと気になります。
Commented by transitroom at 2007-05-29 12:45
最近あまり本は読んでいない(汗)のですが、
読み始めると一気に読んじゃうんですよ...

内容がズシ~ンと思い本だと、一気に読み終えると....(^^ゞ
Commented by cazorla at 2007-05-29 13:38
honnさん 残虐なものはみんな持っているけど それが外に出るように つつく力みたいなもの それが 悪魔とよばれたものではないかと かつて遠藤周作が書いていました。 その誘いが 甘くて でも すごく不愉快だったりするのです。
たぶん そういうものが入ってしまうことってあるのですよね。
Commented by cazorla at 2007-05-29 13:42
npuraさん たぶん 私が一気に読めないのは 母の気持ちになってしまうからかもしれないですね。 
Commented by cazorla at 2007-05-29 13:43
あんつぁん なまいきなこと書いたかも・・・ 
Commented by cazorla at 2007-05-29 13:44
セイロンベンケイさん 特殊な出来事の中に すごく普通のことが含まれていることってありますよね。
Commented by cazorla at 2007-05-29 13:46
eagleiさん 友達より やっぱり親かなーって思います。
愛情があっても その愛情が安定していなかったり。
きちんと向き合ってないような気がするのです。
たとえば 光市の事件の男の子の母親 強姦殺人のあと自殺してますよね。
Commented by cazorla at 2007-05-29 13:47
トランジットルームさん うちの夫も 一気に読んじゃうタイプです。
あっというま。 私は のめりこんでしまうんで 疲れちゃうんですよね。
Commented by antsuan at 2007-05-31 09:09
トラックバックさせていただきました。
ところが、間違えてその前の「Shot in the heartShot 」の方へTBしてしまい、気が付いてTBし直したのですがうまくいかず改めて自分のブログを削除して再度TBいたしました。勝手を言って申し訳ありませんが最初の『自分に向き合う』のTBは削除していただけませんでしょうか。ご迷惑をおかけします。 右左あんつぁん
Commented by cazorla at 2007-06-01 04:46
あんつぁん トラックバックありがとうございます。
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by cazorla | 2007-05-28 05:43 | こども | Trackback | Comments(18)