見えないものが大事なんだよ ね。

ソファ。
焦げ茶の皮に 白いステッチ。
皮だと座った時のひんやり感が続く。
そして 耐久性もある。
典型的デザインであるらしい。

母は 「(安いので良いから) 生きている間使える程度のものでいいわ」と 言った。
夫が 「このソファなら きっと 三十年以上大丈夫ですよ」と 答えた。

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バレンシアで作られている。
座る所の固さを決めて オーダーして 約一週間で届く。

このソファを買う前に もう一件の店にも入った。
そこにも 同じような 白いステッチが入った 皮のソファがあった。
夫がオーソドックスなデザインのほうが いいね と言って そのソファを見ていた。
わたしは なんとなく好きではない。
この白いステッチが嫌い と答えた。
すると 夫が 黒っぽい皮にステッチがなかったら 病院の待合室のソファみたいで 味気ないよ と 答えた。
それでも なんとなく 嫌い。
店員さんが来て 説明してくれる。
これは 中国で作られていて だから 値段も 普通のものの半分なんですよ。

ところが二件目で このソファを見たとたん 一目ぼれ。
ステッチも気にならない。どこがどう違うか 説明できない。
中国製だから 嫌いだったのではないの とあなたは言うかもしれないが
嫌い と思った時は まだ それが中国製だとは知らなかった。
母もこのソファと その色と同じ 肘掛け椅子が気に入って 購入することにする。

ステッチを入れる時に 中国で 縁から何センチのところに 何センチ巾のステッチを入れる というふうに指示され そのソファに座ったことのない 人たちが ただきまじめに働く。
たぶん そのステッチの意味するもの どんな居間に置かれるか なんのビジョンもないまま 
もくもくと働いているのだ と思う。

見えないものが大事なんだ。

もともと他国のもので その国では作られなかったものでも ずっと作っていると 本国よりよいものを作るようになる場合はたくさんある。
フルート 日本のものが最高らしい。 ヤマハももちろん ムラマツは 多くのフルート奏者が使っている。 アイススケートの靴も 日本製がよいと スエーデン在住の方に教えて頂いた。
わたしのビオラは 中国製です。 この値段で木を手で切っているのは なかなかのお買い得だと先生も言っていた。(手で切るのと 機械で切るのとどう違うかよくわからないが 一目で 手で切ったとわかる先生はすごい)
でも そういったものは もうすでに 作っている人たちが どんな風にそれは奏でられるか 具体的な形を想像しながら作っているのだと思う。
その違いは 大きいのではないか。

たとえば 楽譜を見て 西洋音楽を一度も聞いたことのないひとが それぞれの音の長さを正確に再現したとしても それは どこか 音楽として違和感があるのではないか とおもう。

愛情をこめて撮った写真は オートマチックカメラなのに レンズを通して 見ている人の気持ちが伝わってくる。

だから ことばだけでは 伝わらないこと ことばを通じて論議してもなかなか わかりあえないことがいっぱいある。
それでも 見えないものが大事なんだという気持ちが 心の隅っこにあれば 相手が言おうとしていることを全面否定しないで どこか しかるべきところに辿り着くのではないか。
そういう可能性を信じて 書く そして読む。
書き方と表現は違っても 
ベースにある考え方は 違っても
めざしているところは きっと 同じだから。






前回と前々回の記事とこの記事 一応言いたいことを書いてみました。
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Commented by antsuan at 2008-07-25 23:19
祖父に「本物を見る目を養っておきなさい」とよく言われたものでした。その難しさが子供の頃には理解出来ませんでしたが、ようやくこの頃分かってきたところです。
相手の体面でなく、心の目指しているものを知ることが出来れば、違和感は無くなるのでしょうね。
Commented by KAORU at 2008-07-25 23:44 x
言いたいことを書いてみたということで、フムフム、同感ですと思う所が多々あります。前の記事で私たちと言われることへの違和感もそうだし。目に見えなくてもインスピレーションで自分にとっての本物を嗅ぎ分けるって快感ですよね(笑)
お母様とソファにも相性の良さを感じます。
Commented by syenronbenkei at 2008-07-26 00:07
名前を忘れちゃったんだけど、ホームレスの作家が書いてたこと。
その人は芸大出身で、ホームレスになる前は家庭教師で絵を教えていたらしい。
で、いろんな子ども達が描く模写を見ていると、模写を模写してる子のそれと、本物を見たことがある子のそれは違うことがわかるんだって。
何かを自分のものにするっていうのは、見えない部分ごと取り入れるってことなのかも。
例えば自分の女にする時も、その女について知らない部分ごと引き受ける覚悟がいるもんね。
Commented by cazorla at 2008-07-26 06:45
あんつぁん わたしは祖父が両方いなかったので いいな
祖父の教え というのは 時がながれて だんだんわかってくる。
そういう教え は大事ですね。
意志というか 心というか 魂というとちょっと語が強すぎですが
そういう見えないものが 行為のなかに 隠れながらも見えてくるんですね。
Commented by cazorla at 2008-07-26 06:49
かおるさん 長い記事を 読んでくれてありがとう。
書きたいこと ひとつの記事では 書ききれないというか
結局三つとも 根っこは 同じなんだけどね。
何か違う というのは わかりますね。
一目で好きになる というのも この感覚の結果なのかな。
私たちって 女同士で なんとなく使われていますねー。
Commented by cazorla at 2008-07-26 06:55
セイロンベンケイさん そんな作家がいるんですね。 
考古学なんかで この陶器の破片は だいたい何年のもの
みたいなのは 理論ではあらわせられなくて
すべてのデータをコンピューターにいれても まだ不足なところがあって
人間の感性でしか 見分けられないらしい。
行間を読む っていうのもそういうのに近いのか。
「自分の女」なんてことばの使い方で 経験が多い人か 経験が多い人を模写してるだけの人か その違いがわかるんでしょうね。
Commented by rorie at 2008-07-26 21:45 x
うちのソファは、注文して家にやってくるまで5ヶ月かかりました。
のんびり船で来たんです。
量販店で見るソファは、どれを見ても陳腐で座り心地も悪いし。こんなのを買うんだったら、座布団でいいよって。

すっかり諦めていたときに見つけたのが、同じく焦げ茶に白のステッチが入っているソファでした。
他の店で似たようなソファがあって、旦那さんに「こっちの方が安い」といわれたけど、全然違いました。その頃はユーロも110円代でしたし、思い切ってよかったなと思っています。

カルソラさんの言っているビジョンの話、すごくよく分かります。
これから先日本が、中国やアジア諸国と量産や価格で戦うことに意味はないと思います。(たぶん、お互いにとって意味がない)

作り手のマニアックなこだわりや誇りを感じると、愛せますよね。
目に見えない価値に触れると本当に嬉しいなと思います。
Commented by cazorla at 2008-07-26 23:19
rorieさん ヨーロッパから取り寄せるとは さすがです。
でも ほんとにきちんと皮で作って ステッチを丁寧にしてるものだったら
たぶん 取り寄せでも 値段以上って 感じられたでしょうね。
日本の物作りに対するこだわりって やはりすごいなと思う。
たしかに 価格で戦う意味はないですね。 フルートなんて ほんとに売れてるようだし。 先生にも むらまつ持つのが夢なんだ って 言われたこともあります。 あと 車ってよく知らないけど 光自動車って すごいんでしょ? 愛せるものと暮らしたい。
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by cazorla | 2008-07-25 22:56 | お家の中 | Trackback | Comments(8)

あなたに会いたくて・・・・


by cazorla