日曜日の朝9時半にけたたましく玄関のブザーが鳴ることはない。
だから今日はベッドでチャンドラーの「高い窓」のほぼクライマックスを読んでいたのでびっくりした。
私たちのベッドルームは3階なので、とりあえず窓を開けて覗くと2軒向こうに住んでいる老婦人。
最近あまり耳が聞こえないのか、声をかけたが返事がない。
仕方ないので階段を降りていく。
その間にさらに3回ブザーが鳴る。
緊急の一大事で何か手伝ってほしいのか。あいにく夫はワンコを連れて山に行って留守。
玄関にたどり着くとブザーが壊れたと思ったのか、力任せにノックしている。
いやノックなんてお上品なものじゃなく、ドアを壊そうと企んでいるとしか思えない力強さ。
(我が村の老婦人は力強いのである)
ドアが壊れる前にドアを開けると袋を差し出してきた。
「姉の家でね、大量にいちじくができてね、もらったんだけど食べきれなくて腐りそうだから持ってきた」
すごく正直。
ありがたくいただく。受け取ると私の肩をコンコン叩いて、とっても気前の良い人のように振る舞う。
何と言っても彼女はケチなのです。
18年前に住み始めたとき、まずピーマンを持ってきて売りつけた。
私は不在で、夫しかいなかったので市場の3倍の値段で売りつけられた。
夫は私が外国人で、ここで大切に扱われないと困ると思って購入した。
それでもまさかの3倍の値段とは思わなかったらしい。
そこで彼女のあだ名が決定した。
セニョーラ・ピミエント(ピーマン夫人)
その後、いちじくも売りにきたのだが、ちょうどまだ幼稚園の年長さんだった長男が相手をした。
いちじくは散歩道にたくさん植わっており、大量に地面に落ちる。
当時飼っていた犬が大量に食べて大量にウンコをしていたので、息子はこれは犬の好物であると判断した。
(マドリードに住んでいるときは食べたことがない)
「セニョーラ、これは犬の食べ物ですか?うちの犬は散歩道でいっぱい食べるので大丈夫です」
きっと夫はマドリード出身、私は外国人だから「よそ者」としてお金を搾り取ろうと思ったのかも。
ああ、でも彼女は銀行でも売っていた。
銀行員は結構忙しくてお買い物に行けないから便利だし、おまけに貯金してくれるので大量に買っていた。
銀行員に販売して儲けたお金が銀行に行く
まるで世界の経済システムみたいだ。
そのセニョーラ・ピミエントが朝一でいちじくを持ってきてくれたので、これは大ニュースなのかもしれない。
やっと私も村人として受け入れてもらったのかも。
過去記事の写真より散歩道にもいちじくはたくさんなってます。