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朝ご飯セットのコーヒー

ことばの誘惑で書いたオレンジジュース事件の続きです。

オレンジジュースの誘いがあって一週間後の週末。 朝7時に電話。
「朝ご飯 食べませんか?」
またもや 熟睡状態でした。
「ちょっと 早起きして 散歩していたら 家のすぐそばだって気づいたので お腹もすいてきたし よかったら 一緒に朝ご飯どうかな と思って・・」

私も眠れない夜に 日の出と共に散歩を始めることがよくあったので 出かけることにしました。 その時 実は彼がどこに住んでいたのか知りませんでした。
ずっとあとになって 彼が かなり遠くに住んでいると知った時に この日の朝のことを訊きました。

「朝 三時に起きて 出かけました。 ずっと歩いて・・
だって あなたと朝ご飯が食べたかったから」
「でも 朝の七時なら 朝一番の電車に乗れば 別に三時に出かける必要はないでしょ?」
「散歩していてたまたま偶然通りがかった と言った方が誘いやすいと思ったから。
それに 嘘はつきたくなかった。」

あなたと朝ご飯が食べたい というのは よく男性の使う 隠喩です。

前回のオレンジジュースの誘いのコメントでmikiさんが 
ピンキーとキラーズの 恋の季節の 歌詞を載せてくださいましたが
あの 夜明けのコーヒー という名文句
もともと越路吹雪がこの作詞家に話したエピソードをもとにしています。
フランスに滞在中 フランス人が「君と夜明けのコーヒーが飲みたい」と言ったので
越路吹雪嬢 文字通り解釈し 夜明けのコーヒーを飲むべく 朝早くに彼のいる部屋のドアをノックしたら 待ちくたびれて寝入った 不機嫌な男が出てきたそうです。
彼としては 素敵な夜を過ごした後 夜明けのコーヒーを飲みたい と言うことだったのですが・・・ 

でも かれは 純粋に私と朝ご飯が食べたかった。
「奈良風 朝がゆ定食」を食べながら 街並みを眺めていました。
その風景は 静かな絵のように覚えています。
それから 8年間 ずっと一緒にいました。
時々 別れたりしながら。
それでも 人生の中で 「私」という 今の存在にかなり影響を与えてくれた人でした。
「嘘をつきたくなかった」という彼の純粋さに 傷つくこともあったし
そして 私も いっぱい傷つけてしまったけど。

長女が産まれた病院は 母子同室 というのが売りの病院だったけど 帝王切開になったので 別室にされてしまった。 それでも がんがん文句を言って 2日目には同室にしてもらった。 そういうわがままで なんとなく 病院で居心地が悪い時 彼が見舞いに来てくれた。

「私ね あいかわらず わがままなんだよ。
もう すこしは丸くなってもいいと思うんだけど。
自分のしたいことしかできないし
だから いつも 人と良い関係持てなくて
そして自分が傷ついてしまう。
もう少し 丸くならなきゃだめだね。」と 言って笑うと

「大丈夫。
世界が少しずつ変わっていくから。
少しずつ 君に近づいていくから。
君はもう母親なんだから 自信を持たなきゃだめだよ。
丸くなろうなんて思っちゃだめだよ。」

ずっと昔病気になって少し人生の方向が変わった。
そのおかげであわなかったかもしれない人と 知り合えた。
それは 幸せなことだ。

いつも彼と会って 別れる時 歌ってくれた曲
グッバイ グッバイ ベイビー
涙こらえて・・・
Commented by antsuan at 2006-10-29 09:40
好きだから相手を傷つけてしまう。・・だから許してしまう。そう云う男と女の関係が甘酸っぱい思い出として残る恋。人生ってこれだから素晴らしいのでしょうね。そう云う恋を経験した事のない男は淋しいものです。
Commented by りろ at 2006-10-29 11:34 x
昔、20代の半ば過ぎの頃、付き合っていた男の子に別れようと言ったら、サイモンとガーファンクルの「恋人と別れる50の方法」のレコードをかけてくれたなあ。
cazorlaさん、えええと、あのキングトーンズの曲、ヒットしたの68年ですよ。彼ってどこでその曲覚えたのかしら。これですよね。
http://www.duarbo.jp/versoj/v-sengokayou/goodnight-baby.htm
Commented by cazorla at 2006-10-29 16:15 x
あれを 恋といえたかどうか。
兄弟以上に 仲がよかったのですが
毎日電話で2時間以上話してました。
文通もしていました。
かれは政治学を学んでいたので 私の興味のない分野を きちんと説明してくれました。 彼との 交流で 知らなかった世界 考え方を学びました。
人とのつきあいって 男女関係なく すばらしいな と思います。
Commented by cazorla at 2006-10-29 16:20 x
りろさん ブルーハーツというグループというグループが歌っていたのです。
私も キングトーンズの曲として知っていたので 懐かしかったです。
90年前後にかなりはやっていました。 独特の歌い方で。

思い出の曲ってありますね。
Commented by seilonbenkei at 2006-10-29 17:50
私は夜の散歩者でした。
ひどい生活をしてたのに、なぜか女運はあったんです。会えない夜は自転車を走らせて(10kmくらい離れてたかな)、彼女の家の、彼女の窓の下まで「おやすみ」を言いに行きました。真夜中ですから、端から見ればそれは怪しい行動以外のなにものでもないわけですが、「おやすみ」が彼女に届くか届かないかの問題じゃなくて、それをしなければ私がおやすめなかったんですね。
私は見栄っ張りで嘘つきだけど、でも、これに関しては嘘はつかないよということがあります。頼むから、僕のそばにいて。
いろいろあって彼女達とは別れたわけですが、今も賀状が届きます。
そういえば今思い出した。あの頃私が乗ってた自転車の色は赤だったなぁ・・・。
Commented by Moa at 2006-10-29 18:16 x
考えさせれます。 私はこの様な経験がないので、偉そうな事はいえません。
でも、そうのような人物が人にとって何だかの形でささえ成長させてくれる事は、
重要な事だと私は思います。 
こちらへ来て、友達って言うのが大事と倍に思う様になりました。
人生経験には浅い部分もたくさんある私ですが・・・
そして、病気で人生の方向が変ってしまっても悪い事はないと私も思いますよ!
Commented by fumiyoo at 2006-10-30 00:14
皆,若い時は、1つや2つの、ロマンチックを持っているもんですね、若くて世間は狭かったけれどその分,真っ直ぐで純だったのかもしれないね。あの若い頃の人を思う気持ちと、自分自身の純粋培養がそこに居る。懐かしさと共にもう一度帰ってみたい自分がいる。何にも妥協せず、貧乏を怖がらず、ただただ、1人の人を見てきた潔さ。
我がままかも知れない自分をもう一度取り戻したい。歳をゆくと頑固になるというが、あれは若かった頃のみずみずしさを失った”わがまま”だから。
みずみずしい、生き生きした我がままなら丸く・丸く・わがまましたい。
Commented by cazorla at 2006-10-30 07:33
セイロンベンケイさん 赤いジープは 彼の父親の物でしたが 彼の本当の愛車は自転車でした。 後ろに乗って ごっとんごっとん ちょっと痛いな と思いながら 走ったのも楽しい思い出です。 セイロンベンケイさんのことを好きだな と感じるのは そういう思い出に通じるものがあるからなんでしょうね。 かれもとっても文章が上手で でも ブログなんてない時代 Eメールもない時代 毎週手紙をもらっていました。 毎週あうのに手紙というのも へんだとからかわれていましたが 目で読む文章というのは やはり耳で聞く言葉とはちがっているし それに何度も繰り返し読むことができます。
セイロンベンケイさんのブログも なまけものシリーズを読んだ後でまた 昔のを読み返したりしています。 
Commented by cazorla at 2006-10-30 07:36
Moaさん 人とのつながりって ほんとうに大事だな と思います。
つきあっていく上で 初めてわかること 感情の葛藤 いろんなことのなかで 自分自身が見えてきますね。 人生ってどれがベストだったとは言えない所がまた素敵なのだと思います。 そして 今 ここにいる というのも 不思議な感じがします。
Commented by cazorla at 2006-10-30 07:39
fumiyooさん 若いころの自分のことを思うと なんだかいとおしい気分になるんです。(それってナルシス?) 若いから傲慢だった部分もある 若いから 何も考えず お金がなくなることも 怖くなかったし。 みずみずしい わがままだったんですね あのころは。 
Commented by luna at 2006-10-30 17:14 x
素敵だなぁ「世界が君に近づくよ」なんて綺麗な言葉を選ぶ人、未だかつて出会ったことはありません(笑)切ないような素敵なストーリー。本の虫のように何かを読みたい私の、心を満たしてもらえました。cazorlaさんの書かれる文章も、大好きです。
Commented by seilonbenkei at 2006-10-30 23:18
その内書くかもしれませんが、文通経験あります。手紙で騙してきました(笑)
>セイロンベンケイさんのブログも なまけものシリーズを読んだ後でまた 昔のを読み返したりしています。 
つじつまが合ってなくても見て見ぬふりしてね(笑)
ということで、TB穿かせちゃいました。よろしくお願いします。
Commented by obreykov at 2006-10-31 00:54
Cazorlaさん、なーんか本当に映画をみているみたいですね。とってもロマンチックな思い出。羨ましくなりました。
Commented by cazorla at 2006-10-31 01:26
るなさん ありがとう。文章が好きって言って頂いて うれしいです。
私も彼に会えたこと 彼と語った たくさんのことば
そして沢山の手紙
それは どんな本より 胸にしみついています。
ずっと かわらず 年も取らなかったら
ずっと あいかわらず そういうやりとりの中でのほほん としていたかもしれないです。
Commented by cazorla at 2006-10-31 01:34
セイロンベンケイさん トラックバックありがとうございます。
手紙なんて~なんて思っている子多いけど実は手紙って 「技術」さえあれば
効果大なんですよね。
なんていうのを 密かに読んで まねっこしても だめだけど。

つじつま・・・ とろとろ溶けて読んでますからそんな細かいことは 気づきません。
Commented by cazorla at 2006-10-31 01:35
obreykovさん いえいえ 単に文章のあや ことばのあやです。
Commented by pfgia at 2006-10-31 09:47
cazorlaさんの淡々とした文章が好きなんです、相棒によく読んで聞かせるんですけど細かいニュアンスまで西語で説明するのに必死でこの歯切れの良い文章の良さが出せないのがつらいです、苦笑。私、こんな素敵な男性に知り合ったことないです。だからすごく羨ましいというのが本音。若い頃コーヒー飲めなかったし、夜明けにコーヒーなんて飲んじゃったら頭ガンガン&目ギンギンだったろうなぁ。
Commented by miki3998 at 2006-10-31 22:13
何気なく書いた恋の季節のこと、記事に入れてくださってありがとうございます。

 皆様の高尚なコメントを読んでいるだけで、勉強になります。勉強になるって表現も変ですね。なんていったらいいんでしょう・・・?

 もうひとつ別のブログを立ち上げないと・・・だって別人28号に変身してしまうんですもの。(笑)
Commented by cazorla at 2006-11-01 07:25
pfgiaさん ありがとうございます。 pfgiaさんの整理された文章読むと 私っていつもいきあたりばったりで書いてるな と思ってるのですよ。 歯切れが いいなんて 自分ではくだくだ書いてるなと思ってたんで その言葉 とってもうれしいです。
ファミレスのコーヒーってうすーーいんです。 良く何杯もおかわりして(無料だから)ずっとずっと話し込んだりしていました。 
Commented by cazorla at 2006-11-01 07:27
mikiさん 別人28号って私のことですか?

mikiさんとは 年が近いので 色んな共通用語がありますね。
Commented by miki3998 at 2006-11-01 22:13
ごめんなさい~。もちろん私のことです!

 私は別人28号なの(笑)。特に車に乗るとね。または七変化する明智小五郎かなあ。え、知らない?同じ世代じゃないでしょ・・・アハハ。

 こんな私も生まれてすぐにオバサンだったわけではありませんから、浮いた話の一つや二つ、三つ、四つ・・・(誰か止めて)ぐらいあります。でもね、ボキャブラリーが乏しい上に、記憶力が・・・(笑)。忘却とは忘れ去ることなり、なのです!
Commented by cazorla at 2006-11-02 07:54
mikiさん スペイン語も日本語も主語がないからよく間違えます。スペイン語は 動詞の変化があるから やっぱり日本語のほうが難しいかも。 自分でも 別人28号 と言ってたのでついつい私のことだと・・・・

明智小五郎 知ってますとも。
黒蜥蜴ですね。 
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by cazorla | 2006-10-29 07:38 | 思い出 | Comments(22)

あなたに会いたくて・・・・


by cazorla