私はスペイン人にスペイン語が上手ねと言われたことはありません。
村に住んでいるので、みんな無邪気。
誰もがスペイン語を話せるのが当たり前と思っています。
ある日、ある18歳くらいの女の子に「クミコは日本語が話せてすごい!」と言われました。
「だって私、日本人だから日本語話せるよ」と言って大笑いしたら真面目な顔で
「だって日本語は難しいもの。私、聞いててちっともわかんない。本も縦に書いてるし、全然読めない」
「だって生まれた時からずっと聞いてるし、学校でも習うから読めるようになるよ。あなただって、スペイン語を生まれた時から聞いてるからよくわかってるんでしょ?」
すると彼女、さらに真面目な顔でこういうのです。
「だってスペイン語は簡単だもの。私みたいなバカでもみんな話してるよ」
本当に心からそう思ってるみたいで微笑ましかったです。日本人だって誰でも日本語話してるっていうのが想像つかないみたいで。
そういう環境の中にいるから、スペイン語が上手ねとは誰も言いません。
1990年に旅行した時はさらに全国的にそういう雰囲気が強くて、英語で話しかけられたことはありません。
美術館でも英語圏の人にもスペイン語で「リュックはロッカーに入れてね」と言っていました。わかんないのでその人は美術館に入らず、出て行ってしまいましたが。
もちろん当時は外国人といえばフランス語だったので、ボンジュールと挨拶されたことはありますが。
今は都会に行くと中国語か英語で話しかけられることが多いです。驚くのはセビージャのお土産やさんがみんな中国語で話しかけてくること。
きっと簡単な会話なんでしょうけど、全く知らない言語だとすごいスキルに見えますよね。
でもスペイン語を普通に話している場面で「スペイン語上手ね」というのは、私は失礼な行為なんじゃないかなと思います。
ずいぶん昔、英語圏の人たちが日本で少しだけ日本語を話すとみんなが「日本語上手」というのがすごく嫌だと話していたので、それが頭の隅っこにあるのかもしれません。
スペイン語は英語に比べると特殊言語だから、その特殊言語を少しでもわかっていると感動して「上手だ」って言ってくれる、素直に喜ぶべき、という意見も読みました。
ところが、スペイン人てそんなに単純ではありません。
ローマ人の時代も含めれば3000年以上の歴史を持つスペイン人は京都人のような「いけず」なところがあります。
ギター留学をしていた男の子がいました。はっきり言ってほぼ全くスペイン語ができない。それにもかかわらず、fワードというかスラングをバンバン入れて会話をしていました。
するとみんな「スペイン語上手ね。まるでネーティブよ」と口々に言っています。
本人も結構その気になっていましたが、彼がいなくなると口々に悪口が始まりました。
「なに、あれ、聞いてて気持ち悪い」
外国人はあまりスラングを入れるべきじゃないと思います。それは雰囲気とずれる感覚がわかりにくいから。
そしてスペイン人も意外と思っていることと言うことが違うので注意したいと思います。
幼稚園に入るまでは三人の会話は日本語でした。顔が日本人なので今は旅行すると、英語で話しかけられるそうです。